歯は、歯周病や不慮の事故などが原因で突然抜けてしまうことがあります。
歯が抜けた状態を放置していると歯並びやかみ合わせの乱れが起きてくるため、歯が抜けてしまったときには、出来るだけ早く歯科医院で診察と治療を受けなければなりません。
また、歯が抜けた原因が重い歯周病ではなく、怪我が原因で根元から抜けてしまった歯は、30分以内に再植処置を行うことにより、1ヶ月ほどで元通りになる可能性があります。
まさに「時間との勝負」となる再植処置ですが、「歯医者に行く時間が取れない」などの理由で、どうしてもすぐに歯医者に行けないときには自分自身で応急処置を行っておくことが大切です。
応急処置の方法を知ることによって、歯が抜けたときでも落ち着いて対処出来るようになり、歯科医院での治療もスムーズに行えるようになります。
ここでは、「歯が抜けてしまったときの対処法や歯が抜ける原因」についてお話をさせていただきます。

■歯が抜けてしまったときは「30分以内」に歯科医院で受診を

◎「30分以内」であれば元通りに出来ることも

怪我が原因で突発的に「根元から綺麗に歯が抜けてしまった」ケースであれば、「30分以内」に歯科医院で再植処置を行うことにより、抜けた歯を元通りに出来る可能性があります。
しかし、重い歯周病が原因で歯が抜けた、歯の根元が折れてしまった、等のケースでは残念ながら抜けた歯を元通りにすることは出来ず、抜歯や義歯による治療が必要となります。

◎抜けた歯を穴に入れておく

歯が抜けてしまったときには、抜けた歯を流水で20秒ほど軽くすすいでから抜けた部分の穴に差し込んでください。
応急処置の方法として一番良いのは抜けてしまった部分の穴に歯を差し込む方法ですが、もし、歯が差し込めないようであれば頬の内側や舌の下に歯を挟むようにしてください。
歯をお口に入れる際には、抜けた歯を飲み込んでしまわないように注意しましょう。

◎牛乳か生理食塩水で抜けた歯を保存

抜けてしまった部分の歯を元の位置に差し込めない場合には、抜けた歯を「牛乳」もしくは「生理食塩水」の中にひたしておくのもOKです。
また、学校の保健室などに常備してある「歯の保存液」の中に歯をひたすのも良い保存方法となります。
気をつけなければいけないのは、抜けた歯を単にティッシュペーパーに包んだりそのままの状態で容器に入れて歯を乾燥させてしまうことです。
重要なポイントは、抜けてしまった歯の根の表面にある「歯根膜」という膜を乾燥させないことであり、歯が抜けてから30分以内で歯根膜が乾燥していなければ、歯科医院で再植を行うことにより歯根膜があごの骨である歯槽骨と結合して1ヶ月程度で歯を元通りに出来る可能性があります。
ただし、「乾燥させなければ良いから」と言って、水道水やミネラルウォーターは浸透圧の関係上、歯根膜の組織が変性してしまうことがありますので、保存液としての使用は避けてください。

◎抜けた歯を拾うときには歯冠部分を持つこと

抜け落ちてしまった歯を拾うときには、歯冠部分（外から見えている歯の上部分）を持つようにしてください。
歯の根っこを持ってしまうと歯根膜にダメージを与えてしまいますので、気をつけましょう。

■歯が抜けたときの対処法

この項では、歯が抜けてしまったときに「どうしても歯科医院に行けない」場合に自分で行うことが出来る2つの対処法をご紹介します。
これらはあくまでも応急的な処置方法となりますので、歯が抜けたときには出来るだけ早く歯科医院で治療を受ける必要があります。

1-1.歯が抜けてしまった箇所の止血をする

歯が抜けてしまったときに出血していたら、まずは止血を行いましょう。
清潔なガーゼを歯が抜けた部分の穴に当てて止血してください。
ガーゼがない場合にはティッシュペーパーでもかまいません。
このとき、ガーゼやティッシュをあまり強く患部に当ててしまうとかえって出血が激しくなることがありますので、注意しましょう。

1-2.口の中を清潔に保つ

出血がおさまってきたら、水かぬるま湯でかるく口をゆすぎ、口の中を清潔に保つようにしましょう。
歯が抜けてしまったときには、抜けた箇所の歯ぐきの穴を歯ブラシで磨いたり、綿棒や爪楊枝などを使って抜けた部分の穴を触る、などの行為はしてはいけません。
これらの行為は不必要に患部を刺激してしまい、感染症や骨髄炎などの重篤な症状を引き起こすおそれがあります。

■歯が抜けたときに歯科医院で行う処置方法について

2-1.再植治療

抜けた歯が元の位置に戻る見込みがあるときには、歯を元通りにする再植を行います。
再植では、歯が抜けた箇所のあごの骨をレントゲンで確認した後、麻酔を使って抜けた部分に歯を差し込んでゆき、抜けた歯を周りの残っている歯にワイヤーや接着剤を使って固定する治療を進めてゆきます。
再植治療ではおおよそ「10～14日間程度」で歯を固定しているワイヤーを取り外し、歯の神経を治す治療や神経が回復しないケースでは「抜髄」という歯の神経を抜く治療を行います。

2-2.インプラントなどの義歯治療

抜けてしまった歯が元通りにならない場合には、インプラントや部分入れ歯、ブリッジ等の義歯治療を行い、歯の「噛む機能」と「見た目」を回復してゆきます。

【抜けた歯を元通りにするのは「時間との勝負」】

「歯が抜け落ちてしまったときの対処法」についてご紹介しました。

怪我が原因で根元から綺麗に抜け落ちてしまった歯は、30分以内に再植を行うことにより、歯を元通りに出来る可能性があります。
30分を超えてしまうと歯を元通りに出来る可能性がどんどん低くなってゆきますので、歯が抜けたときには出来る限り早く歯科医院を受診して治療を受けるようにしましょう。

当院での歯周病治療についてはこちらもご覧ください。

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わかば歯科クリニック　理事長　板野　賢