歯周病の恐ろしさ

突然ですが、皆さんは「歯が抜け落ちる原因となる病気の第一位」はどんな病気だと思いますか?
「えっ、やっぱり虫歯なんじゃないの?」とお答えになる方が多いかと思いますが、実は、歯が抜ける原因となる病気の第一位は「歯周病」です。
歯周病は日本人が歯を失う原因の第一位の病気であり、その確率はなんと「歯が抜ける人のおよそ4割」が歯周病が原因で歯を失っています。
(虫歯は第二位でおよそ3割の人が虫歯が原因で歯を失っています)
「気が付いたらいつの間にか歯が抜けていた」といったこともある恐ろしい歯周病ですが、歯周病の本当の恐ろしさは「歯や歯ぐきだけではなく、全身の病気をひきおこす」という点にあります。
歯周病は放置してしまうと、心筋梗塞や脳梗塞など、全身性のさまざまな病気をひきおこすことが明らかになってきています。
今回は、「歯周病の恐ろしさ 歯周病がおよぼす全身への悪影響」について詳しくお話をさせていただきます。

歯が抜けそうなイラスト

■歯周病は「骨を溶かしてしまう病気」です

歯周病は日本人の成人のおよそ8割の人がかかっているとされる、「国民病」とも言える病気の一つです。
歯周病は、歯に出来る虫歯とは違い、歯の周辺組織である歯ぐきやあごの骨にさまざまな悪影響をおよぼす口腔内疾患であり、具体的な症状としては、

  • ・歯ぐきが腫れる
  • ・歯ぐきから出血する
  • ・歯ぐきから膿が出てくる
  • ・歯がぐらぐらしてくる
  • ・口臭が発生する

といった症状があります。
歯周病で怖いのは、単に歯ぐきから出血したり膿が出るだけではなく、症状が進むことによって歯周病をひきおこす「歯周病菌」という細菌が、歯を支えている歯槽骨というあごの骨を溶かしてしまう点です。
歯周病の症状が進行すると歯がぐらぐらになり、最終的にはあごの骨が溶けて歯を支えることが出来なくなり、歯が抜け落ちてしまうこともあります。

■歯周病は全身に悪影響をおよぼします

●「歯が抜ける」だけでは済まない歯周病の恐ろしさ

歯周病の恐ろしさは歯が抜けるということだけにとどまりません。
歯周病を放置してしまうと、やがて歯周病菌は歯ぐきやあごの骨の血管から血液中に侵入し、血液に侵入した歯周病菌が身体の中をかけめぐり、全身の健康にさまざまな悪影響をおよぼします。

①心筋梗塞・狭心症

歯ぐきやあごの骨の血管から血液に侵入した歯周病菌は、やがて心臓の血管に到達。
心臓の血管内部を歯周病菌が刺激することにより、血管の内壁部分に脂肪のかたまりであるプラークを作ってしまいます。
プラークが出来て血液の通り道が細くなった血管は、血液の流れが速くなってしまい狭心症をひきおこすほか、血流が増えることで血管内壁に傷がつき、傷がついた部分に血のかたまりである血栓が出来てはがれた血栓が血管を詰まらせてしまい、心筋梗塞などの命にかかわる病気をひきおこすことが判明しています。

②脳梗塞

血管内部に侵入した歯周病菌は、脳の血管にもプラークを発生させます。
プラークが出来た脳の血管内部は心臓の血管と同様に傷がつきやすくなり、血栓が出来てはがれた血栓が脳の血管を詰まらせ、脳梗塞をひきおこします。
歯周病と脳梗塞の関係については「歯周病にかかっている人はそうでない人よりも2.8倍、脳梗塞になりやすい」という研究結果の報告も出されており、歯周病と脳血管の疾患の関係が徐々に明らかになってきています。

③糖尿病

歯周病と糖尿病の関係については、以前は「糖尿病の合併症として歯周病を発症しやすくなる」とされてきました。
しかし、現在では「歯周病が原因で糖尿病を発症しやすくなる」ことが少しずつ明らかになってきています。

・歯周病が糖尿病を誘発させるメカニズム

症状が進んで血管内部に入り込んだ歯周病菌は血流に乗って全身をかけめぐりますが、人間の身体が持つ防御機能によって血液中の歯周病菌はやがて死滅します。
死滅した歯周病菌は血管の内部で「内毒素」という毒素を出し、血液中に含まれる内毒素が、インスリンの働きを低下させる特質を持つTNF-αという物質を脂肪組織や肝臓から産み出してしまうことが判明しています。
つまり、内毒素を出す歯周病菌の死骸によって、インスリンの働きが低下して糖尿病をひきおこしやすくなってしまうのです。
歯周病と糖尿病の因果関係についてはまだ研究段階であり、はっきりと歯周病と糖尿病の関係が明らかになっている訳ではないのですが、「歯周病を併発している糖尿病の人に歯周病治療を行ったところ、血糖値の値が正常な範囲に近づくなど改善の兆候が見られた」、という結果が出ており、歯周病と糖尿病には深い関係があることが徐々に明らかになってきています。

④誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、飲食物を誤って飲み込んでしまい、気管や肺に水や食べ物が入り込んで肺の内部で細菌が繁殖し、炎症を起こす病気です。
誤嚥性肺炎と歯周病についてははっきりと因果関係が明らかになった訳でないのですが、誤嚥性肺炎の多くは歯周病菌が原因でひきおこされるおそれがあると言われており、誤嚥性肺炎を予防するためには、歯周病を治療することが重要なポイントとなります。

⑤早産

近年、さまざまな研究により、歯周病が全身に悪影響をおよぼすことが判明していますが、その中でも特に、妊娠している女性である妊婦の方が歯周病をわずらうことで「早産」をひきおこしやすくなることが少しずつ明らかになってきました。
歯周病と早産の因果関係についてはまだ研究段階ではあるものの、「血液に入り込んだ歯周病菌が胎盤を通してお腹の中にいる赤ちゃんに感染し、その結果早産が誘発されるのではないか」、と言われています。
実際、歯周病は早産をひきおこす原因の中でもタバコやアルコールよりはるかに高い「7倍の危険率がある(歯周病にかかっていない人と比べて)」ことが判明しつつあり、歯周病と早産の関係が指摘されています。

【セルフケアとプロケアを合わせて行い、歯周病を効果的に予防しましょう】

歯周病と全身の疾患の因果関係については、昨今の研究で徐々にその関係性が判明しつつあります。
歯周病はお口の中にひそんでいる歯周病菌によってひきおこされる生活習慣病であるため、歯周病が糖尿病などの生活習慣病と関係があっても、医学的には何らおかしいことではないのです。

全身の病気をひきおこすこともある歯周病を予防するためには、毎日のブラッシングによるプラークコントロール(セルフケア)を基本として、定期的に歯科医院で歯周病の検査を受けること(プロケア)が大切です。
毎日のブラッシングを欠かさずに行い、合わせて半年に一度は歯科医院で検査を受けるようにして、歯周病を効果的に予防しましょう。

当院の歯周病治療についてはこちらもご覧ください。


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わかば歯科クリニック 理事長 板野 賢

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