歯ぎしり

「歯ぎしり」と言うと、多くの方が「くやしい思いをしたときにする動作」という認識を持っていますが、歯ぎしりはれっきとした病気であり、慢性的な症状としての歯ぎしりは「睡眠時ブラキシズム」という疾患に分類されます。

歯ぎしりは自分自身ではなかなか気づくことができず、家族やパートナー、旅行や合宿などほかの人といっしょに寝る場面で歯ぎしりのことを指摘され、そこで初めて自分が「歯ぎしりの症状がある」ということを知るケースも少なくありません。
そして、歯ぎしりは「ギュリギュリ」ときしむような音が人に迷惑をかけるだけではなく、実は歯ぎしりをしている人の身体そのものにさまざまな悪影響をおよぼしていることが、研究結果により明らかになっています。

ここでは、歯ぎしりの原因や種類、改善方法についてご説明をさせていただきます。
歯ぎしりで悩んでいる方は、ぜひ、ご参考になさってみてくださいね。

歯ぎしりのイメージ写真

■歯ぎしりってそもそも何?種類はあるの?

歯ぎしりとは、無意識の状態で歯を強く噛みしめてしまったり、歯をすり合わせる動作全般のことを指します。
歯ぎしりは大きく分けて以下の3つの種類があります。

1-1.グランディングタイプ

1つ目の歯ぎしりのタイプは「グランディング」です。
グランディングタイプの歯ぎしりはギュリギュリと音をさせながら歯をこすり合わせる、という特徴があります。
このため、歯ぎしりによって歯の表面が削れてしまうことが多いです。

1-2.クレンチングタイプ

2つ目の歯ぎしりのタイプは「クレンチング」です。
クレンチングタイプの歯ぎしりは音がしないという特徴があり、上下の歯をグーッと強く噛みしめる歯ぎしりのことを指します。
クレンチングタイプの歯ぎしりは気づかないまま放置することであごに負担がかかり、「顎関節症」を発症するケースも多いです。

1-3.タッピングタイプ

3つ目の歯ぎしりのタイプは「タッピング」です。
タッピングタイプの歯ぎしりは上下の歯がカチカチと合わさって音が鳴る、という特徴があります。
ほかの2つと比べるとタッピングタイプの歯ぎしりをする人は比較的少ないのですが、それでもやはり、歯の表面やあごには慢性的に負担がかかっている状態です。

■歯ぎしりの原因について

2-1.噛みあわせの悪さ

歯ぎしりの原因の代表的なものには、噛みあわせの悪さがあります。
噛みあわせが乱れる理由は人によって異なるのですが、もともと歯並びが悪い方は噛みあわせも悪化しているケースが多いほか、虫歯や歯周病にかかった方が痛みのない側の歯ばかり使うことにより、短期間で噛みあわせが変化することもあるため、注意が必要です。

2-2.姿勢の悪さやクセ

頬杖をつく、いつも横向きで寝る、などのクセがある方は、姿勢の悪さが噛みあわせに悪影響を与えてしまい、歯ぎしりを発症することがあります。
また、現在はスマホやタブレッドなど、使用時に常に下を向いてうつむくような姿勢を取る方が多いのですが、下を向き続けることは上下の歯が常に噛み合わさった状態となるため歯ぎしりの原因になりやすく、よい習慣とは言えません。

2-3.ストレス

そして、歯ぎしりはストレスによってもひきおこされます。
精神的なストレスのほか、肉体的なストレスも身体の筋肉を緊張させるため、歯ぎしりを発症しやすくなります。
ストレスが歯ぎしりをひきおこすメカニズムについてはまだよく分かっていない部分もあるのですが、起きているあいだは自分の意志の力で歯ぎしりをコントロールできている方でも、就寝中はたまったストレスを発散しようとして無意識に歯ぎしりをしてしまう、というケースが多いのです。
また、お酒の飲みすぎや喫煙習慣もストレスが身体にかかりやすくなり、歯ぎしりの原因になることがあります。

■歯ぎしりがおよぼす身体への影響

3-1.歯が削れたりすり減る、ヒビが入る

歯ぎしりの習慣が続くと、まず最初に歯に影響がでてきます。
具体的な症状としては歯が削れてしまったり、すり減る、そして歯の表面にヒビ(亀裂)が入ることもあります。
歯ぎしりによって歯に亀裂が入ると、虫歯にかかっていなくても歯がしみる、などの症状が現れ始めます。

3-2.顎関節症を発症する

歯ぎしりはあごの異常である顎関節症の原因になることもあります。
歯ぎしりで身体にかかる力は強い人でおよそ100kgにもなるため、その力があごの軟骨部分にあたる関節円盤のズレをひきおこしてしまったり、あごの周辺の筋肉が痛む、などの症状がでてくる場合があります。

3-3.肩こり、頭痛、顔の変形など

歯ぎしりはほかにも、あごの筋肉の緊張が全身に伝わることで肩こりや頭痛などをひきおこすケースもあります。
また、歯ぎしりで歯を食いしばる習慣が続くとあごの筋肉の筋繊維が盛り上がり、エラの部分が張り出して顔が大きくなってしまう方もいます。

■歯ぎしりの治療・改善方法

歯ぎしりの治療法法についてですが、実は現在の医学においては、「確実に歯ぎしりを治す方法」は確立していません。
ただし、虫歯や歯周病、噛みあわせの悪さが原因で歯ぎしりが発生しているケースでは虫歯や歯周病を治療して対処を行うほか、歯列矯正で噛みあわせを調整することによって症状が改善されることがあります。

また、就寝時に「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースを使うことにより、歯や歯ぐきにかかる力を分散、あごの筋肉の緊張をやわらげることができます。

そして、ストレスが原因で歯ぎしりが発生している場合には、精神的ケアが必要となるため、心療内科で精神安定剤を処方してもらう、気楽に物事を考えるようにする、など、「こころのやすらぎ」を得られるように精神面からのアプローチを行うことが大切です。

【歯ぎしりを改善して健康状態を回復することを心がけましょう】

単なるクセ、という風にとらえられがちな歯ぎしりですが、放置すると歯だけではなく全身の健康、そして精神面にもさまざまな悪影響をおよぼします。
歯ぎしりは症状によっては虫歯や歯周病治療でかなり改善されますので、歯ぎしりでお悩みの方は、まずは歯科医院で診察を受け、歯並びや噛みあわせに異常があるかどうかを調べてもらうことをおすすめします。

当院での歯並びの治療(矯正治療)について詳しくはこちらもご覧ください。


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わかば歯科クリニック 理事長 板野 賢

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