多発性根面齲蝕

普通の虫歯は、虫歯菌がだす酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされ、穴が開いていきます。
そして、エナメル質から象牙質に虫歯が進行していくのですが、通常であればこの段階で冷たいものが歯にふれると痛みを感じるようになるため、比較的早く虫歯を発見することも可能であり、早期治療によって歯の神経を残せる確率が高くなります。
しかし、虫歯にはエナメル質から始まるもの以外にも露出した歯の根面から始まる「根面齲蝕(こんめんうしょく)」という虫歯があります。
根面齲蝕は歯の根面部分の象牙質がいきなり虫歯菌によっておかされる怖い虫歯であり、歯の根っこの周りを帯状にぐるりと虫歯が進行するのが特徴で、主に高齢者の方(早い方では50代以上でも)が発症しやすく、歯周病によって歯ぐきが下がっている状態の歯の根面に発生することが多いです。
根面齲蝕は複数の歯にいっせいに起きることも多く(多発性根面齲蝕)、気がついたときには何本もの歯の神経が虫歯菌におかされていた、というケースも少なくありません。
今回は、一般的な虫歯とは異なる「多発性根面齲蝕」について詳しくお話をさせていただきます。

歯の模型の写真

■通常の虫歯はエナメル質から始まる

通常、普通の虫歯は歯の表面に付着したプラーク(歯垢)にひそむ虫歯菌からだされた酸によってエナメル質が溶かされ、穴が開きます。
虫歯菌によって開けられた穴はエナメル質から象牙質、そして歯の神経が通っている歯髄へと進行していくのですが、通常の虫歯はエナメル質に穴を開けたあとすぐに歯の神経に到達することはなく、歯冠(歯ぐきの上にでている歯の上部)の象牙質の厚みも3~6mm程度はあるため、虫歯が神経に達するまでにはかなりの時間がかかります。

虫歯にかかると冷たいものが歯にしみたり、ときどきズキンとうずいたりすることがありますが、これらはまだ象牙質で虫歯がとどまっている段階で起きる症状であり、この段階で治療を行えば歯の神経を残すことは十分可能です。

■根面齲蝕は象牙質から歯が溶けていく

根面齲蝕は通常の虫歯とは異なり、歯ぐきが下がって露出した歯の根面部分の象牙質が虫歯菌によって溶かされることで始まります。
象牙質はエナメル質よりもやわらかい物質でできており、根面齲蝕を発症して歯が象牙質から溶けていくと歯の神経までの距離も2mm程度しかないため、比較的速いスピードで虫歯菌が歯の神経に到達してしまいます。

根面齲蝕では最悪の場合、エナメル質で守られている歯冠部分は異常がないのに歯の根っこの部分が虫歯によっておかされボロボロになり、まるで木を根元から斧で切り倒すように歯冠がぽろりと取れてしまうケースもあります。

■50代以上の方は「多発性根面齲蝕」に要注意

根面齲蝕は年齢が50歳以上の中高年の方に多く見られる虫歯で、特に複数の歯に根面齲蝕が発生した状態を「多発性根面齲蝕」と呼びます。
多発性根面齲蝕を発症したケースでは、数本~場合によっては十数本以上もの歯が一気に根面齲蝕の状態になってしまうこともあります。

中高年の方に根面齲蝕が多い理由としては、第一に歯周病が考えられます。
歯周病はお口の中にひそんでいるプラークが歯と歯のあいだの歯周ポケットという溝に入り込み、歯ぐきに炎症を起こしたり歯を支えているあごの骨を溶かしてしまう病気です。
歯周病をひきおこす要因には「歯磨きをきちんとしていない」「タバコやアルコールによって唾液の分泌が減少し口腔内の自浄作用が低下している」などがあり、これらの生活習慣を続けてしまうことによってお口の中のプラークが増殖して不衛生な状態となり歯周病を発症、歯ぐきが後退し、露出した根面に齲蝕が発生してしまいます。

■かぶせ物をした歯にも根面齲蝕が発生する

根面齲蝕はかぶせ物をした歯にも発生します。
かぶせ物は通常であればクラウンの縁は歯ぐきの上に来るのが理想とされており、かぶせ物の縁が歯をすべておおう形になるように治療を行います。
しかし、歯周病や、強すぎる力で行う歯磨き、そしてデンタルフロスのかけすぎなどが原因で歯ぐきが下がってしまうと、歯の根面部分が露出してかぶせ物と歯ぐきの間が虫歯にかかりやすくなってしまい、根面齲蝕を発症することがあります。

■根面齲蝕の治療方法と予防の仕方について

○治療方法

根面齲蝕の治療は基本的に通常の虫歯と同じ方法を用いますが、治療の難易度は根面齲蝕の方が高くなります。
その理由は、通常の虫歯がエナメル質→象牙質→歯髄→根管と順序をたどって進行するのに対し、根面齲蝕は象牙質→神経といきなり神経部分に虫歯が到達してしまうため、歯の根っこの周りに帯状に虫歯が拡がることも多く、歯の根をぐるりと削る形で治療を進めていくことになるからです。

また、歯と歯のあいだにできた根面齲蝕は器具を横から挿入しにくく、歯冠部分から削って治すため、虫歯は小さくても歯を削る量がかなり多くなってしまうこともあります。

○予防の仕方

根面齲蝕の予防の仕方は通常の虫歯予防と変わりません。
基本は自分自身で行う毎日のブラッシング、そして定期的に歯科医院で受けるメンテナンスを合わせて利用することにより、早い段階での根面齲蝕の発見と治療が可能となります。
また、歯の清掃を行う際にはデンタルフロスや歯間ブラシを使って取り除きにくい歯と歯のすき間の汚れも綺麗に落としておくことが重要です。

【根面齲蝕は定期健診で早期発見・早期治療を】

若年層の方に少なく中高年の方に多い根面齲蝕は、放置していると複数の歯が一気に虫歯におかされ、神経治療が必要となるケースもあります。
かけがえのない自然の歯をいつまでも長く健康な状態で保つためにも、普段から定期的に歯科医院で健診を受け、根面齲蝕の早期発見と早期治療を心がけるようにしましょう。

当院での虫歯治療について詳しくはこちらもご覧ください。


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わかば歯科クリニック 理事長 板野 賢

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