歯が痛くなり歯科医院にかけこんで治療を受けたあと、「虫歯を削ってもらったし、もう痛くないから仮歯のままでいいや」と言って治療を受けるのをやめてしまう人が少なくありません。
たしかに、虫歯を削って仮歯を詰めるとそれまで感じていた虫歯の痛みがウソのように消え去り、治療を受けた本人は「もう大丈夫だな」と思いがちですが、これは大きな間違いと言わざるをえません。
虫歯は単にその部分を削って痛みがなくなればハイおしまい、というものではなく、虫歯の症状を完治させるには最後まで治療を継続して受ける必要があります。
ここでは、「虫歯の治療を途中でキャンセルすると生じるデメリット」について詳しくご説明いたします。

■虫歯の治療を受けることを途中でやめてしまうと・・・

ケース1.「応急処置だけで治療を受けるのをやめてしまった場合」

A.「さらに痛みが悪化する」

虫歯が歯の神経部分にまでおよんでしまい、歯の神経に炎症がおきている場合には麻酔が効きにくく歯を削れないケースがあります。
このようなケースでは、ひとまずの応急処置として歯の洗浄を行ったのち、抗生物質や鎮痛剤を処方して様子を見ることがあります。
これらの処置を歯科医院で行ったあとは一時的に虫歯の痛みがひきますので、「ああ、痛みが取れた、よかった」と安心してしまい、治療を受けることを途中でやめてしまうケースがよくあります。
しかし、歯の炎症がおきているような虫歯は歯の神経が通う歯髄（しずい）部分が虫歯におかされてしまっていることがほとんどであり、一時的な応急処置で痛みが消えたからといって治療を中断してしまうと、鎮痛剤が切れたときにさらに痛みが悪化してしまうおそれがあります。

ケース2.「仮歯を入れたあとに治療を受けるのをやめて放置してしまった場合」

A.「仮歯が取れてしまいさらに虫歯が悪化する」

虫歯を削ったあとに詰める仮歯はプラスチック樹脂でできているため、約1～2ヶ月ほどで次第に磨り減ってきます。
通常は詰め物やかぶせ物を仮歯を入れてからあまり時間をおかずに接着するため問題がでることはあまりないのですが、仮歯を入れたあとに治療を中断して放置してしまうと仮歯が磨り減るだけではなく、仮歯自体が取れてしまい削った部分がむきだしになります。
歯の表面のエナメル質よりもやわらかい象牙質がむきだしの状態になると虫歯の進行が早くなり、さらに症状が悪化するおそれがあります。
また、歯の神経を残してぎりぎりの部分まで削っているケースでは仮歯が取れてしまうとあっという間に虫歯が歯の神経に到達してしまい、歯の神経を残せなくなる確率が高くなります。

ケース3.「詰め物やかぶせ物（本歯）の型を取ったあとに放置してしまった場合」

A.「本歯の型が合わなくなり、作り直しになることがある」

人間の歯は少しずつですがお口の中で移動し続けており、歯の位置が常に変化しています。
このため、仮歯を入れたあとに本歯の型を取り、その状態のままで治療を受けるのをやめてしまうとせっかく作った本歯の詰め物やかぶせ物が微妙に合わなくなってしまい、最悪の場合、本歯を作り直さなければならなくなることがあります。

ケース4.「歯の神経を取った状態のまま放置してしまった場合」

A.「歯を残すことがむずかしくなるほど虫歯が悪化してしまい、あごの骨が溶けることもある」

歯の神経が通う歯髄が虫歯におかされてしまったときには神経を抜く抜髄治療を行います。
歯の神経を抜くと痛みを感じなくなるため、この段階で仮歯のまま治療をやめてしまう方がまれにいるのですが、非常に危険です。

その理由は、歯の神経を抜いたまま仮歯の状態で治療をやめてしまうと歯の根の部分が虫歯におかされたり細菌が繁殖しても痛みを感じなくなってしまうためです。
痛みがあればまだ患者さん本人も症状に気づくことができるのですが、歯の神経を抜くと痛みを感じなくなるため知らず知らずのうちに虫歯が進行してしまいます。
そして、ふたたび痛みを感じ始めるときには歯の根の先にたまった膿によってすでにあごの骨が溶かされた状態になっていたり（歯の根の先が炎症をおこすと歯の神経を取り去ったあとでも歯ぐきやあごの部分に非常に強い痛みを感じるようになります）、根管内部が細菌におかされることで治療不可能となり抜歯以外では対処ができない状態にまで症状が悪化してしまうこともあります。

【虫歯は最後まで継続して治療を受けることが大切です】

「治療を途中でキャンセルすることで生じるデメリット」についてお話をさせていただきました。

虫歯は痛いときには「とにかく早く治してほしい」ということですぐに歯科医院に駆け込む方が多いのですが、痛みが消えてしまうと「痛くないからもう大丈夫かな」「通うのが面倒だから」などの理由で治療を受けるのをやめてしまうケースが少なくありません。
しかし、不完全な状態のままで治療を受けるのをやめてしまうとさらなる虫歯の悪化につながるほか、あごの骨が溶けて顔の形がゆがんできたり、最悪の場合は抜歯せざるをえない状態にまで虫歯の症状が進んでしまうこともあります。
大切な歯を虫歯で失わないようにするためにも、治療は最後まできちんと受けることを心がけるようにしましょう。

当院での虫歯治療について詳しくはこちらもご覧ください。

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わかば歯科クリニック　理事長　板野　賢