酸蝕症(さんしょくしょう)

突然ですが、みなさまは「酸蝕症」という言葉をごぞんじでしょうか?
酸蝕症は食べ物や飲み物に含まれている酸や胃液(胃酸)によって歯が溶ける症状であり、虫歯菌によって歯が溶けて穴があく虫歯(う歯)とは異なります。
ここでは、酸蝕症とはどのような状態を指すのか、また、酸蝕症になるとどうなってしまうのかについて詳しくお話をさせていただきます。

柑橘類の果物の写真

■酸蝕症(さんしょくしょう)って?

酸蝕症とは、歯の表面をおおっているエナメル質が飲食物の酸や胃酸などによって溶けてしまうことを指します。
歯は身体の中でももっとも硬い組織ですが、それと同時に歯は酸に弱いという性質があるため、酸にさらされる状態が長くなると歯の再石灰化が十分に行わなくなり、エナメル質が溶けてしまいます。

■酸蝕症になるとどうなっちゃうの?

酸蝕症になると以下のような症状が現れてきます。

・歯がしみる
・歯の形が細くなる
・歯の厚さが以前よりも薄くなる
・前歯の先が欠けてしまう
・詰め物と歯のあいだにすき間ができている
・歯のかみ合わせ部分が平らになる
・歯のツヤがなくなる
・歯が黄色くなる
・詰め物の色が変化する
・詰め物やかぶせ物と歯の境目の部分が茶色くなる

上記の症状は虫歯やほかのさまざまな原因によってもおこりますが、虫歯かと思っていたら実は酸蝕症だった・・・というケースも少なくありません。
酸蝕症によってエナメル質が溶けるとその下にある象牙質がむき出しの状態になります。
象牙質がむき出しになった状態を放置していると、エナメル質よりもやわらかい象牙質は食べ物をかむときの摩擦でどんどんすり減ってしまうほか、虫歯ができると一気に症状が進行する、冷たいものがしみる、など、さまざまなトラブルがお口の中で発生するようになります。

■酸蝕症をおこす原因は?

人間のお口の中は、ふだんは中性のpH7前後に保たれています。
しかし、飲食物や胃酸の影響でお口の中の酸性度が上がってpHが5.5以下の状態が長時間続くと歯が溶けやすくなってしまいます。

[酸蝕症の原因]

・みかんやグレープフルーツ、レモンなどのかんきつ系の果物や果汁から作られたジュース
・ビタミンCなどを含む酸性のビタミン剤
・アスピリンなど酸性の薬剤
・炭酸飲料、お酢、栄養ドリンク、ワイン、スポーツ飲料など
・塩酸や硫酸、黄リン、硝酸などの粉じんが発生する職業の方
・過食症や拒食嘔吐など、摂食障害による自己誘発性の嘔吐を繰り返している方

[酸蝕症のリスクが高い・低い飲食物]

・リスク高

●炭酸飲料(pH2.2)、ワイン(pH3.4)、スポーツ飲料(pH3.5)
●レモンやみかん、グレープフルーツなどの果物(pH3~4)

・リスク中

△紅茶(レモン果汁を含まないもの)(pH5.5)
△野菜(pH4~6)
△肉・魚(pH5~6)

・リスク低

○米・パン(pH5~7)
○チーズ(pH6~7)
○お茶(pH6.3)、水(pH7.0)

■酸蝕症と虫歯の違いについて

酸蝕症と虫歯はどちらも酸によってエナメル質が溶けるという意味では同じです。(脱灰)
しかし、虫歯はミュータンス菌がだす酸によって歯が溶かされて穴が開くのに対し、酸蝕症は飲食物や胃酸、塩酸などの酸性の物質によって歯が溶ける、という違いがあります。
また、虫歯は歯垢(プラーク)や食べカスが付着している部分に発生しますが、酸蝕症は酸がお口の中全体に広がるため歯が広範囲に浅く溶けてゆく、という特徴があります。
このことから酸蝕症は自分自身ではなかなか気づきにくく、気がついたら歯が細くなっていた、歯の形が変わっていた、など、「いつの間にか症状が悪化していた」というケースが多いです。

■酸蝕症を予防するには?

1.お口を水でゆすぐ

レモンやみかん、炭酸飲料など酸性の飲食物を摂取したときには、水でお口の中をゆすぎましょう。

2.「だらだら食べ」はやめる

おやつや間食、アメやガムなど、1日中何かしらの食べ物を食べている「だらだら食べ」は歯の再石灰化をさまたげます。
食事やおやつは決まった時間にとるようにしましょう。

3.哺乳瓶を使い続けるのはNG

哺乳瓶はその形状から使い続けていると前歯が酸蝕症や虫歯になってしまうことがあります。
赤ちゃんのときには仕方ありませんが、おおよそ1歳から1歳半になるまでには哺乳瓶を卒業してコップから飲み物を飲ませるようにしましょう。

4.ジュースや清涼飲料水を飲みすぎない

ジュースや炭酸飲料などの清涼飲料水は酸度が高く、糖分もたっぷり含まれているものが多いため酸蝕症や虫歯にかかりやすくなります。
のどがかわいたときや水分補給の際には水かお茶を飲むようにしましょう。

■酸蝕症の治療方法

酸蝕症は症状が軽ければ食事の内容に気をつけるなど、毎日の食事の摂り方を見直すだけで再石灰化がうながされるため歯の状態の改善が見込めます。
食生活の見直しだけで回復できない場合には歯の表面に薬剤を塗る知覚過敏処置を始めとして、歯の欠損が小さいケースではレジン充填、欠損が大きいときには歯にかぶせ物をするフルクラウン処置を進めていきます。
もし、全体の歯が大きく溶けてしまい酸蝕症が重症化してしまった場合はインプラントなど、さまざまな処置方法を採り入れながら治療を進めるフルマウスレストレーションが必要となるケースもあります。

【酸蝕症は早めの治療が肝心】

ついつい見落としがちな酸蝕症は早期発見・早期治療が重要です。
特に子どもの歯はやわらかく酸蝕症の症状が大人よりも進行しやすいため、保護者の方が注意して見守る必要があります。
酸度が高いジュースや炭酸飲料、かんきつ類の果物の摂取はできるだけひかえ、ふだんの生活の中で酸蝕症を予防することを心がけるようにましょう。

当院での虫歯治療について詳しくはこちらもご覧ください。


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わかば歯科クリニック 理事長 板野 賢

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